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 -2- 




次の日、梨華ちゃんが仕事の間リビングを片付けた。スペアキーが出てきた。



 これからの共同生活のために、ルールを決める。
 基本は自分のことは自分で、だけど洗濯は分けると効率悪いから一回で、あたしやるからと言うと
「だって下着とかあるし…」 
 とか顔赤らめやがって
 ええーなんかこっちまで意識しちゃったじゃんよ!
 おんなじもん身に着けてんのに変な話だ、と思ったけど
 めんどくさいので特に突っ込まずに話を進める。

「あたし、ご飯は一緒に食べたいなあ」 
「いいけど、あたしバイト終わんの12時とかだよ?」 
「うん。帰りが早い時だけでいいの。 
 ひーちゃんだって飲みとか帰らないこととかあるでしょ、だから家にいる時。 
 朝でも夜でも二人ともいる時は、一緒にご飯、食べよ?」 
 上目遣いでお願いされて、断れるわけもなく。てか断る理由もなく。
 そもそも家事はミキティからの指令でもあるし。
 でもそれって、毎日今日ご飯どうするとか聞かなきゃいけないわけだよなーと思って、
 なんか、同棲みたい…
 昨日初めて会ったのになぁ。


 お金の話をしたら、そんなのはいらないから貯めなさいなんて逆に怒られてしまった。
 状況が状況だし、今まで一人で払ってきたものを貰うのは気が引けるからと強く断られたけど、
 あたしはそういう事はきちんとしたいのでしつこく食い下がりちゃんと払うことを約束した。
 すぐには引っ越せない理由が物件云々の問題だけじゃないのを察して呼んでくれたみたいで、
 ゆっくりでいいから、と言ってくれた。


「でも、別にお部屋見つけなくても、ずっとここにいてもいいんだよ?」 

 なんて上目遣いで言われてうーんマジでずっと住んじゃおうかなんて…
 思ったりも、する。



 そんな感じで特に何の問題もなくあたしは快適な生活を保証された。

 掃除してれば部屋は綺麗で広いし(梨華ちゃんの寝室はどうかわからないけど)
 防音きいてるから隣の生活音なんて聞こえないし。
 前のアパートは学生ばっかで毎日朝方までうるさかった。
 バイトはもともと学校の近くを選んでたからそんなに遠くないし、学校は徒歩圏内。
 今までよりちょっとだけ長く寝れるようになった。

 でも一番おっきいのは、家に帰ると人がいること。 

 火事のこともあるけどもともと淋しがり屋で家に一人というのが苦手だったから、
 バイトで遅くなって疲れて暗い夜道を帰ってきても、
 可愛い同居人が待っていてくれてると気持ちが和らぐ。
 別に決めたわけでもないのにいつも二人でリビングで過ごす。

 早く帰ったときはあたしが飯作って、二人で食べて片してテレビ見たり、
 あーなんかいいなあ。
 梨華ちゃんといると落ち着く。ときどき変なこと言って疲れるけど、
 この人の話を聞くのは嫌じゃない。良くも悪くもすごく素直で真っ直ぐで、
 こまごまとした気遣いが優しくて。結構何してても可愛い。それは別にいいか。


 しかし、
 初めて会ったときは完璧な美人OLって印象だったのに。
 マメに片さないとすぐ部屋はきったなくなるし、
 朝はあたしが起こしてやんないとなかなか起きれないし、
 機械にやたら弱くてテレビ番組を録画すんのにもいちいち聞いてくる。
 あたしがバイトの日はいつもコンビニ弁当なんか食ってるし、
 この人は一体どうやって一人で生活してたんだと思う。



  *  *  *  *  * 




 今日もいつものように飯食ってテレビを見る。
 リビングにはでっかいピンクのソファーがあって、
 梨華ちゃんはいつもそれの端っこに座る。
 あたしは梨華ちゃんの脚を横に、低めのソファーを枕に床にごろごろ。
 この体勢ちょっと腰とか痛いんだけど、
 たまに隣に座ろうもんならぴったりくっついてきたりしてそれもある意味身体がもたないので、
 今日も床に寝転がる。


「…ひーちゃんて髪細いね」 

 え、え、なにしてんのこの人。

 いきなり髪の毛触られた。こーゆーことがあるから安心できない。
 あたしは背高い方だから頭触られんのなんて慣れてないし、
 そんなに優しく撫でられたら困る。
 動悸は速まるし、顔は熱くなるし、でやめてほしいけど気持ちいい。

 あーなんか、眠くなってきたかも…と思って
 うっすら開けた目でウトウトとテレビを見てたら、
 いきなり不穏な音楽と暗い映像が流れ出して、なんだよホラー映画かよー。

 こーゆーの結構苦手なんだよな、替えていーかなと思ってリモコン探してたら、
 横でキャーキャー言いながら楽しんでる人が一人。
「ひーちゃんやだこわ~い」 
 なんつってるからチャンネル回そうとすると、待って見てるからぁ、って。
 う~、けっこーこわい…
 げっ。

 ああ、もう完全に目ぇ覚めてきちゃった…
 わ、うわ~

 ちょ、梨華ちゃん、見てないじゃん!
 ちょ
 うおおおこえええ


 ……



 …お、終わった。
 風呂入ってからで、よかった。

 つーか、梨華ちゃん…。

 見上げると、すっかりちっちゃくなって震えてる。
「……だいじょぶ?」 
 返事が無い。体育座りして、膝に顔を伏せたまま動かない。
 自分で見るなんてゆっといて、もう終盤あたりからずっとこうだ。
 バカだなぁ。ほんとバカかわいー。

「りーかーちゃん、おぉい」 
「…」 
 まだ返事がないので、起き上がって無防備な背中を人差し指でとんとんと叩く。

「やんっ」 

 やんって…
 へ、へんなこえ出すなよ、ったく…
「…も終わったよー。だいじょぶ?」

「ううー、怖かったぁ~。」 
 やっと顔上げた梨華ちゃんは、いつも困ったときする八の字眉よりもっと八の字になってて。
 思わずぷっと吹いてしまった。
「な、なんで笑うの~!」 
「いや、なんか…ごめんごめん」 
「もぉ!ほんとに怖かったんだよ?」 
「だから他の回そうとしたら、梨華ちゃんが見てるからってゆったんじゃん」 
「だってだって見たかったやつだったんだもん!」 
「そんで結局ラスト見てないんじゃしょ~がね~っしょ…」 
「だって、こんなに怖いと思わなかったぁ…」 

 言いながら梨華ちゃんは、あたしに身体を向けてぐっと顔を近付けてきた。
 ち、近いから。
「…まあ、怖かったねぇ…」 
「うん…ひーちゃん、もう…寝る?」 
「え?ああ…」 
 まだ11時だけど、基本早寝のあたしはバイト無い日はもう就寝時間。
 でも今日は、梨華ちゃんほっとけないし。さっきので眠気飛んだし。
「んー、まだ寝ないかな」 
「いーよ?寝て」 
「いや、別に…明日遅いし」 


「ね、ひーちゃん……」 
 言いながら更に顔を近づける。

 な、なに?





「……一緒に寝よ?」 





 ガキかよ!!

 てか、恥ずいから!


「…子供じゃないんだからさぁ」 

「だって怖いんだもん…」 

「もうちょっと、起きてるからさ」 

「でもひーちゃん寝ちゃったら怖いもん」 


「…」 

「…おねがい」 


 あああ、またそんな上目遣い…


「ひーちゃん…」 


 それ、その声、反則だから




「おねがぁい」 





「……しょーがないな」





  *  *  *  *  *  



 だいたい、何をこんなに緊張してんだ。
 一緒に寝るだけじゃん、そんなの誰とでもするじゃんか。

「ね~ひーちゃん、もっとこっち来てぇ」 
 セミダブルのベッドの中、
 あたしはできる限り身体を離して落ちそうなくらいのはじっこに寝転んだ。
 梨華ちゃんは間をポンポン叩きながらあたしを呼んでいる。

 だってこの人、女同士でもヘンな気なりそうなぐらい色気あるカラダしてんだもん。
「…梨華ちゃん寝相悪そうだから、やだ」 
「う…悪くないもん。」 
「…」 

「…怖いよ~淋しいよぉ」 
「……」 


「ひーちゃぁん…来てぇ…」 

 やらしー声でやらしーことゆうんじゃない!

 しょーがないから、はじっこからもそもそと淋しい間を埋めていく。
 ち、近ぇ…
 息が触れるくらいの距離。にむしょーにドキドキして、
 動揺がばれないように視線を逸らす。

「ったく…いくつだよもー」 
「だってひーちゃん怖くないの?」 
「怖いけどさぁ…一人で寝れるよ。」 

「…ひーちゃんがいて、よかったぁ」 


 ほんとカワイイなこいつ…
 そんでほんと声エロい。

 ちらっと視線を戻すと、いつものウルウルした瞳でまっすぐに見つめられていた。

 また恥ずかしくってすぐに下向くと、
 パジャマの首元から、ああああ、乳が。

 いやこれほんとに、乳か?
 普段服着ててもおっきいのわかるくらいなのに、
 横向きで寝っ転がってるから谷間がすごいことに。


 ミキティ、梨華乳はマジででかいです…。


「…ひーちゃぁん?」 
「え?う…あ…り、梨華ちゃん、乳が、いや胸が…み…」 
 みえてます…っていやだから乳見えてるくらいで何動揺してんだっつの!
 乳なんてあたしにもついてるから!こんなでかくねぇけど!
「えっ?」 
「あ…いやぁ、ミキティがさ…梨華ちゃん、胸、おっきいでしょって…」 
「ああー。何かね、よく鷲掴みにされるの。なんだよこの胸は、って。ふふふ。」 
 なにやってんだよミキティ…亜弥ちゃんに言ってやろ


「…触ってもいーよ?」 

「はぁ!??」 
「あれぇ、違った?」 
 いやいや、確かに触りた…いや、ずっと見てたけども。

「ば~か。そんなん彼氏にでも揉んでもらっとけ」 
「……彼氏、いないもん」 
 いるともいないとも聞いてなかったけど、なんだやっぱりいないのか。
 いつも家にいるもんなー
「なんでいないの?」 
「…………別れたから…」 

「ああ…ごめん」 
「いーの。終わったことだもん」 
 目のやり場に困って天井辺りに泳がせていた視線を梨華ちゃんに戻すと、
 何か思い詰めた表情で、
 うぅ、なんか気まずい空気…。聞いちゃいけなかったかな。

 この空気をどうにかしたい、何か言わなきゃ、何か…




「…触ってもいい?」 



 ってアホかああああああ 



「…いーよ…」 


 ってお前もアホかああああああ 



 「触ってもいい?」「いーよ」って、もう触るしかないじゃん、どどどーすんだよ。
 平静を装いつつ内心オロオロしまくってるあたし。
 いやだから、乳くらいで…。
 べべ別に、女同士で、でかい乳触らしてもらうだけじゃん、
 梨華ちゃん待ってるし、行け行っとけあたし。


 胸元に、手を伸ばす。
 待ってる梨華ちゃんの顔は、すんげえやらしい。
 目細めたときの下まぶたがエロい。半開きの口が、何とも言えない。

 動揺させてんのは、この人だ。
 何か息荒くなってきたような気するけど、あたしが変態なんじゃない。


 手が、胸に、ふ、触れて…

 ななななんでブラ付けてねんだよおおお計算かこのやろおおお


「ぁん…」 

 だだだからヘンな声だすなっ…




「ひ…ちゃん、触り方、えっち…」


「…梨華ちゃんこそ声…すっげやらしぃ」



「…ぁ」

 パジャマがはだけた部分に直接指が触れると
 梨華ちゃんはほんの少しだけ身体を震わせて小さく声を漏らした。

 かわいい、めちゃくちゃかわいい…。
 だめだ、とまんない…


「ひー、ちゃん」 

「…梨華ちゃ…」 




 ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ。


 誰 だ よ ! !



 あたしも梨華ちゃんも、手の動きとか息遣いとか、二人して完全に固まってしまった。

 ブーーッ、ブーーッ、ブーーッ。

「…電話、じゃない?」 
「あ…うん…。ちょ、ごめん…」 
「うん…」 
 梨華ちゃんの胸に置かれた手を、ゆっくりと離して枕元の携帯を取る。

 ブーーッ、ブッ。切れちった。
 履歴を見ると、
『 不在着信  ミキティ 』
 ミキティ…。
 どうせまたなんか暇だから~、とかなんとかで掛けてきたんだろーな…

 いや、でも、助かったのかな。
 あのままいってたら、何か確実にやばいことになってた気がする。

 落ち着いて考えたらなにやってたんだおいおい。


「あー、ね、寝よっか」 
「いいの?電話…」 
「ん、だいじょぶ。ほらー梨華ちゃん、早く寝ないとまた朝起きれないよ」 
「だって怖くて寝れないよ~…ひーちゃん、起こしてくれるでしょ?」 
「起こすけどさ…」 

 あたしは内心まだ動揺してるのに、
 梨華ちゃんは全然普通で、とゆうか開き直ってんのか、
 更に距離を詰めて寄ってきて、腰に手を回したりする。

 胸が、胸が当たってますから。
 さっきまでそれ揉んでたんですけど、だめだ感触思い出す…

「ああもう、くっつくな!」 
「やだひーちゃんもぎゅってして!」 

 恋人かよ!!
 なんでそんなんまで面倒みなきゃいけないの、まったく…

 と思いつつあたしの腕は梨華ちゃんの腰へ。だって、この人には何か逆らえない。
 どこまでも世話の焼ける…。


「梨華ちゃんさー…あたしが来る前どうやって起きてたの?」
「んー、いつもギリギリに、危機感で。」
「…じゃあ、ご飯は?」
「食べてなかった」
「ハァ??」 
「ちょっと、食欲不振だったの」 
 マジで??
 …それって、別れた彼氏のせい?
 あの思い詰めた表情といい、なんか、色々大変だったんかなあ

 あたしはなにも言えることがないやと思って、
 何となく、梨華ちゃんの頭をよしよしと撫でた。

 梨華ちゃんはふふっと笑ってあたしの胸に顔を埋める。


「あったかーい」 


 息、くすぐったいよ



「ひーちゃぁん…」 


 もそもそ動くなって

 髪、くすぐったいよ



 怖くて寝れなぁいなんて言ってたくせに。

 すぐに静かな寝息が聞こえてきたから、少し体を離して寝顔を覗き込む。

 顔だけは完璧だなー

 あたしはまだドキドキしてんのに、ひとり寝やがって。
 熟睡してるようなので、ほっぺたを突ついたり髪の毛で遊んだり。


 部屋に戻ろうかと思ったけど、この可愛い寝顔をもうちょっと見ていたかった。




  *  *  *  *  *  



「あれよしこー、クマできてるよ。どーしたん?」 

 昨日は、結局部屋には戻らず、つーか戻れず、ずっと梨華ちゃんのベッドにいた。
 寝相なのかなんなのか下半身を両脚で挟まれて身動きできなくて、
 腕には乳が当たってるし、寝顔はかわいーし、拷問かと思った。

 なにがあろうと寝れないことなんて滅多に無いあたしが、
 朝まで悶々としてしまい結局眠れたのは2時間くらい。
「ああ…寝てないの、マジで…。だめだ、まいちんあとよろしく」 
 こんな日は、早く帰ろう。帰ってバイトまで寝よう。
 グループ研究のレポートの最後の最後の確認を、まいちんとその他メンバーに任せてあたしは席を立った。 
「いいねぇ家ちかいと」 
「あー。まいちん家遠いもんね」 
「徒歩10ぷんは近すぎだよ!」 
 まあ確かに。いやいや、ほんとによかった。
 もうこれ運命だね、二人で暮らすのは必然だったのかもね、ってもう寝ぼけてんのか?あたし
 適当な謝罪をしてその場を後にし、学校を出てマンションに向かう。

 歩いてたら目覚めてきちゃったな、今からバイトまで何時間寝れるかなー
 なんて考えながらエレベーターを降りると、何かすっげー派手な女の人が廊下に。

 見たとこ30歳ぐらい、
 金髪で鋭い目つきで、高そうなスーツに高そうなアクセをじゃらじゃら着けてる。
 見かけない人だけど、7階の住人なのかな。
 一瞬目が合ってすぐに逸らしたけど、あっちは何か、何か見てるんですけど。
 見てるどころかガン見じゃん、睨まれてるじゃん。え、なに?なんなの?
 怖いからさっさと部屋に入ろうと705号室の前に立って鍵を探してると、
 げっ、こっち来たよ、何だよ~!

「ちょっと…」 
 は、話し掛けられたし。

「はい?」 
「アンタがひーちゃん?」 
「え!?」 

 なぜその呼び名を…。
 そうですけどと応えると女性は笑顔で頭を下げた。
「やっぱり、梨華ちゃんの言うとったとおりの子やねすぐわかった。 
 私、ここ経営してます中澤です。梨華ちゃんから話は聞いてますー」 

「あ、あ~!どうも、吉澤です…」 
 この人が中澤さんか!
 きれーな人だなー…。梨華ちゃんの血縁ってみんな美人なんだろうか。



 部屋に問題は無いかとか住み心地はどうかとか簡単な挨拶話をして、
 ここじゃなんだからと部屋に上がってもらおうとしたけど中澤さんは急いでいるからと遠慮した。

「今日はねーちょっと野暮用でこっちまで来たんやけど、吉澤さんに会えてよかったわ」 
「いや~こちらこそ…」 
「梨華ちゃんやけど、外じゃ気ぃ張って家ではああでしょー、 
 ホンマやったら身内以外となんてよう住まれへん子やんか。 
でも吉澤さんのことめっちゃ気に入ってるみたいで。」 

「あ、へえ…」 
 梨華ちゃんの好意はわかってるけど、
 こうやって人に言われると何だか恥ずかしい。
「なんやめっちゃ嬉しそうにしてたで。ひーちゃん来てから家にいるのが楽しー、って」 
 そんなこと言われたら益々照れる。
 とゆうか、楽しい思いさせてもらってるのは、あたしだし

「めっちゃ優しくてええ子やって」 
 なに言ってんだ

 いきなり転がり込んで、迷惑かけてんのに。
 いつもぶっきらぼうにしか答えられないのに。


 中澤さんは、すごく優しい笑顔で言った。
「あんなでもカワイイ親戚やから、仲良うしたって」 
「はい」 

「大事にしたってな」 
「…はい」 

 それはちょっとあたしにゆうことじゃないんじゃと思うけど。

 大事には、します


 それじゃと言って中澤さんが去ってからも、あたしはしばらくその場でぼーっと立ち尽くしていた。
 瞼が重くなってきて、寝る為に帰ってきたんだと思い出した。


 梨華ちゃんに、今日はバイトだけど一緒にご飯食べようとメールしておこう。



  *  *  *  *  *  



「裕ちゃんに?」 
「うん、昼過ぎに。廊下で会った」 

 待っていてくれた梨華ちゃんの為に、彼女の好きなイタリアンの店に来た。

 あたしも会いたかったなーなんて言いながらパスタをくるくる。

 なんか、緊張する。
 いつも隣で飯食ってるから、向かい合ってるのが恥ずかしい。

「何話したの?」 

「え?」 
「何て言ってた?」 
「あー、何だっけな…別に、お世話になってますとかそんなこと」 

 覚えてないわけないんだけど。
 何か、恥ずかしいから。

「でも、梨華ちゃんのことよく知ってた。ほんとに仲いんだね」 
「うん、ちっちゃい頃近くに住んでて。親戚で一番裕ちゃんと仲良いの。」 
「へー…そーいやどんな親戚だっけ?どー繋がってんの?」 
「えぇとね、ママの従姉妹の旦那さんの、弟さんの奥さんの、お姉さん」 
「遠いな! 
 じゃあ全然血は繋がってないんだ、なんだ」 
「なんだ、って?」 
「いや、中澤さんて、すごいきれーな人だったから。 
 やっぱ梨華ちゃんの親戚だなーて思ったんだけど。」 

「それって、どうゆう意味?」 
「え?」 

 まずい。
 なに言ってんだあたし。

「ねえねえ~」 
 ああもう、なに期待してんだよ。そのままの意味だよ。わかってんでしょ、聞くなよ。
 そんなカワイイ顔したって言わねえから。

「…別に。中澤さん美人だね、って話」 
「うん、裕ちゃん綺麗よね。ってそれはそうだけどぉやっぱりあたしの…って下りはぁ? 
 ねえねえどーゆーことぉ~?」 
「別に意味なんかないから!早く食っちゃえよもー」 

「もう…ひーちゃん照れ屋なんだから」 

 そうだよ、シャイなんだよあたしは。

 だからそんな目で見ないで。
 カオ赤くなってたらどーすんだよ、恥ずかしいよ。


 今日の梨華ちゃんは何だかほんとに綺麗で。
 あたしは食事中なのにどきどきどきどき。

 外にいるから、梨華ちゃん化粧してるから。照明が薄暗いから。
 言い聞かせながら、梨華ちゃんをチラチラ盗み見たりして。


 絶対言わないから。

 梨華ちゃんが綺麗でドキドキするなんて。






「り、かちゃん」 

「なぁに?」 



「あー…」 



「きれーだよ、すごく」 



 ああ、言ってしまった。



 なんで、ゆうこと聞いてしまうんだろう

 どうして望むことしてあげたくなるんだろう



「…ありがと…」 


 彼女は真っ赤になって、
 でもひーちゃんの方が綺麗よ、なんて言いながらまたパスタをくるくる。






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