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「ひとみちゃん…」
「なに?」

「だめ、だよ」

そう言って梨華ちゃんは視線を落とした。
悩ましげに俯く顔も綺麗だ、なんてぼんやりと思う。

「あたし、まだ…」
まだ、なに?
耳元で囁く。
あたしの息に梨華ちゃんは小さく肩を震わせ、目を閉じた。
だめ、でも、ううん。
心の葛藤が表情に表れる。
何て分かり易いひとなんだろう、あたしはその思考を遮るように
彼女の顎を持ち上げて視線を合わせた。

「…嫌じゃないよね?」

問い掛けたけれど答える隙も与えず、あたしはまた雨のように口付けを降らせる。
「…ん、ひとみちゃん、ま…って、」
嫌だ。止めたくない。
あたしがずるいのと同じ位、梨華ちゃんだってずるいでしょう?
こうなる事を、望んでたんでしょ?
言葉とは裏腹に、抵抗しない梨華ちゃんの身体。
あたしの腕の中でゆっくりと崩れ落ちていった。

「……だめ、なの…」
あたしの足元で蹲り、梨華ちゃんは声を殺して泣き始めた。

「…なにがだめなの?」
「とにかく、だめなの」
「なら、嫌ってゆってよ」
「…嫌じゃないからだめなんじゃない」
「そんなのわかってるよ」

あたしだってこんなこと、本当はしちゃいけないんだ。
絵梨香を傷付けたことに、涙したのがつい数日前。
梨華ちゃんと中澤がどんな関係なのかも知らない。
でも、どうでもいい。目の前の彼女が、今のあたしのすべてなんだ。

「…わかってるよ。だから」
あたしも体を落として、梨華ちゃんと視線を合わせた。
その涙の美しさに、眩暈がする。


「だったら、いけないこと沢山しようよ」
梨華ちゃんは、微かに頷いたように見えた。
















─ equal ─
   
















ひとみちゃんが好きだと言ってくれた。
涙が止まらなくなるようなキスを、何度もしてくれた。

そうして私は益々ひとみちゃんを好きになってしまう。
今目の前にある、綺麗な寝顔から目が離せない。


結局、こうなっちゃうんだね。
ひとみちゃんの柔らかい頬を指でつつきながら、一人で溜息を吐く。
今日、中澤先生と居る所を見られた時は、もうだめだって思った。
今まで悪戯に仕掛けてた罰が当たったんだと思った。
呆れられると思ったのに、ひとみちゃんは追いかけてきてくれて。

でもそう考えると、あれだけ誘ったのにやっと抱いてくれたのが今日、
ひとみちゃんて案外奥手なのかもしれない。
だって何度も私に欲情してたのはわかったもの。
ああ、またそんなことばっかり。でも、だって、こうして欲しかったんだもの。
誤魔化せないくらいに、初めて会った時からずっと、この子と触れ合いたいって思ってた。

ある意味これが、望んでた形なのかもしれない。
無理矢理にでも奪ってくれなければ、私達はただ足踏みを繰り返すだけだった。
それに私は、倫理的には何も悪いことはしてないし。
女同士っていう点では、そうハッキリとは言い切れないかもしれないけど。
私自身の心の問題であって、きっと人によっては取るに足らない事だったりするんだわ。

「ん…梨華ちゃぁん」
目を覚ましたひとみちゃんが、ふわふわした笑顔で私を引き寄せた。
真っ白な柔らかい腕に包み込まれて、つい数時間前の行為を思い出して恥ずかしくなってしまう。
ひとみちゃんは私の存在を確認すると、満足そうに笑ってまた眠りにつこうとした。
慌てて大丈夫なのと尋ねると、時計に目をやってから帰らなきゃ、と力無く体を起こす。

ああ、行ってしまうの

幸せは永遠には続かない。

ひとみちゃんが起き上がってから、家に連絡して制服を着てドアの前に立つまで、
私達はまた何度もキスをした。
明日になってよく考えたら、ひとみちゃんはもう二度と私に会わないと決めるかもしれない。
或いは私が、そう思うかもしれないし。
ドアの前で最後のキスを交わして、二人で階段を下りた。
行為の後の気まずさからか、ひとみちゃんは両親と顔を合わせると
蚊の鳴くような声でお邪魔しましたと言った。


玄関先でひとみちゃんを見送ってから、部屋に戻り携帯を開いた。
着信が一件。…中澤先生。
後で掛けようか、それとももう返さない方がいいのかな。
暫く考えて携帯を置いた。
考えても、きっと私はまた理科棟へ行ってしまう。
先生の為には行かない方が良いのに、
あの人に『淋しい』と言われれば私は行かずにいられないんだ。
だって、あんなに好きだったんだもの。
どんなにずるくても、どんなにひとみちゃんの方が好きでも、先生を突き放す事が出来ない…。

ねえ、ひとみちゃん、私をどこかへ連れ去って。







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