花音ちゃんとするのはこれが五回目くらいだ。
もっとしたかもしれないしまだそんなにしてないかもしれないけど、とにかくそれくらい。
五回目にもなると何となく始める合図みたいなのが出来てくる。私達の場合はキスのリズム。
とんとんとん、って感じのリズムで速めに数回口づけたら、それが合図になる。
合図のあとは確認するみたいにじっと見つめ合う。じゃあこれもふたつ目の合図かも。
そうしたら大体次にはお互いの服に手をかけたりするんだけど、
今日はそういうのの前に私から押し倒してみた。花音ちゃんはびっくりした顔になって面白い。
「ふふふふふふ」
「なにー?なに笑ってんのぉ?」
わけわかんないって感じで私を見る花音ちゃん。白い頬。そばかすがあるのは私と一緒なのに全然違う。
指先で触れると恥ずかしそうな顔になる。この顔が好き。
花音ちゃんがそういう顔をするから、私の中の欲望が燃え上がってしまう。
どうしたらもっとそんな顔させられるんだろう。どうしたらもっと違う顔してくれるのかな。
身体で訊けば身体で応えてくれる。花音ちゃんは素直だ。素直なのがかわいい。
かわいいから肌を見たくて、隠してるものを脱がせてく。
袖とか襟元とか引っかかって、寝転がってるとあんまりうまく脱がせられないことを知る。
手を引いて半身を起こすと花音ちゃんの頭はぼさぼさで、思わず笑ったらぼさぼさの花音ちゃんが寄り掛かってきた。
「…あやちょー」
「んー?」
首のあたりに花音ちゃんの息がかかって、熱くなる。
乱れた頭を直してあげてると、首筋に唇が触れて、全身がくすぐったくなる。
寄り掛かられた体勢のまま服を脱がしてくけど寝転がってるときと同じくらい脱がせにくい。
花音ちゃんも小さな手でぎこちない動きで私の服を一枚一枚剥いでいく。これは五回目でも慣れないらしい。
裸になった白い身体をじっと見つめると、花音ちゃんがみないで、と私の顔を覆うふりした。
見たいから脱がせるのに見ないでなんて無理なお願いだと思う。だから目の前の手をどけてもう一度ベッドに押し倒した。
押し倒すっていうのは結構楽しいかもしれない。花音ちゃんは今度はびっくりしてないけど不思議な顔をしてる。
何も身につけない身体を重ねてするキスは、さっきまでのとは全然違う。もっと奥に触れてるような感じ。
花音ちゃんの身体は柔らかい。こうして重なってると、私の身体が硬いのがわかる。うまく交わらなくて対照的。
柔らかい胸元に触れてると花音ちゃんの息は上がってく。私の手にちょうど収まる大きさが好き。花音ちゃんの身体が好き。
好きだから触れたい。触れるほどに花音ちゃんも私も高まっていくのがわかる。
脇腹を撫でると花音ちゃんはくすぐったそうに眉を歪めて、もっと下にいくと、また違う風に眉が歪んだ。
「……ぁ、…っ……、」
漏れる声は微かで物足りない。もっと聞きたくてそこに触れる。
その感触は毎回違うから、それでたぶん今日はきっと、花音ちゃんはかなり感じてるんだ。
そう思ったらぞわわって背筋が震えて、花音ちゃんの顔がよく見たくなって近付けたらキスされた。
珍しい感じの大胆なキスで、唇や舌だけじゃなく花音ちゃんの全身が私を捕まえる。
だから今度は私が捕らえる。
柔らかくて小さくて、押し潰してしまわないか少し不安になる。キスの合間に花音ちゃんが息継ぎみたいに荒く呼吸する。
私の手の動きに反応して花音ちゃんの下半身が動く。太腿がぐっと力んだり、急に腰が引けたりする。
私はもっと反応が欲しくて少し無茶をする。
奥へ、奥へ。もっと奥。もっと強く。もっと大胆に。花音ちゃんが苦しそうに喘いだ。
傷付けたくはないけど止まらなくなる。花音ちゃんの息。声。温度、におい。震える鎖骨を噛んでみた。それから肩と、こめかみと。
さらさら揺れる髪をかじってみる。味はしない。花音ちゃんの反応も無い。だけど花音ちゃんが動くと髪の毛も揺れるんだ。
荒い息は規則的に速くなってきて、たぶんもうそろそろ。
早く、早く絶頂へ。その顔が見たい。震える声が聞きたい。
「…あ、や、ぁや…」
急に名前を呼ばれるからぞくっとする。どうにかなりそうなくらい。
息の間に漏れる快感の音とは違うはっきりとした高い声。これ以上無いくらい刺激的な響き。
「あや……、ぃく…」
高く響く声で頭の奥からびりびりと全身が鈍く痺れる。
花音ちゃんの小さな手が私の肩を掴んだ。ぐっと力が入ってく。昇りつめてく。
呼吸が浅い。速い。もうすぐ。私は私の思うままに花音ちゃんの中に触れる。
昇りつめた熱が、広がって散ってく瞬間がわかった。
痛いくらいに掴まれてた肩からすぅっと力が逃げてく。
規則的に速かった呼吸はゆっくり途切れ途切れに、少し苦しそうに息をする。
「花音ちゃん」
私は愛を込めて耳元に囁く。花音ちゃんは目を閉じて呼吸が完全に整うのを待っている。
かわいい。かわいい。私の花音ちゃん。私のもの。
汗ばんだ額を指先で撫でる。伏せ気味な目蓋の奥の瞳が私を捉えた。
「花音ちゃん」
私は愛を込めてもう一度、名前を呼んだ。花音ちゃんは笑った。終わった後のキスはまた全然違う。
力の抜けた唇の感触はさらさらしてる。舌で前歯を撫でると抵抗された。
「あやちょ、」
花音ちゃんは何か言いたそうな顔をしながらでも唇から言葉は出てこなくて、頭を撫でてあげると瞼が閉じられる。
薄い瞼に口づける。どくどくと打つ脈動が伝わってくる。どきどきする。
「花音ちゃん、好きだよ」
思ったよりうまく発音出来たけど、花音ちゃんは思ったような反応はくれなかった。
私を見てるのか見てないのかわかんないような目で、ぼんやりこっちを見ながら、頷いた。
たぶん照れてるんだと思う。そういうことにしたい。だって私はこんなに花音ちゃんのことが可愛いのに。
散らばった髪の毛をかじってみる。やっぱり味はしない。だけど今度は花音ちゃんの身体が小さく揺れた。
ねえ私は待ってるからさ、早く言葉を聞かせてよ。







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